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インタビュー

インタビュー2回目は、TechWave編集長の湯川鶴章(ゆかわつるあき)さんです。湯川さんは、前職の時事通信社時代から今日まで、IT専門記者としてシリコンバレーなどで多くのカンファレンスを取材し、何百というプレゼンをみています。以下はその一例で、記事中に気になるくだりがあったのでまずそれを引用します。

記者としてみた日米のプレゼン

シリコンバレー進出というバブル TechCrunch Disruptに参加して

今回一緒にTechCrunch Disruptに参加した日本人の中から、米国人のプレゼンテーションの上手さに対する驚きの声が多く聞かれた。僕自身は一般的に言って米国人のプレゼンテーション能力が高いことは以前から十分に分かっていたが、TechCrunch Disruptとサムライ・ベンチャー・サミットを比較すると確かにその違いは明白だった

TechCrunchDisruptもサムライ・ベンチャー・サミットも起業家のプレゼンイベントである点は同じですが、前者はプレゼンターの国籍が問われず、後者はプレゼンターが日本人に限られるというもの。両社を比較すると日本人のプレゼンは負けているというのが記事の指摘するところです。

もちろん語学力も日米のプレゼンター間に差を生む一因でしょうが、プレゼンスキルそのものにも差はあるでしょう。それが原因で注目されるべきサービスが記事にならずに終わっているのなら勿体ないことです。
そこで湯川さんにプレゼンの巧拙が記者に与える影響を聞いてみました。

1 shot湯川:(記者として取材するときには)プレゼンによって記事内容が変わってしまってはダメだと思う。どんなプレゼンであろうと大事なことをつかむのが仕事だからね。

効率良くメッセージをデリバリーするのが悪いことだとは思わない。ただメッセージを受け取る方は、プレゼンターが上手であれ下手であれ、大事なメッセージは受け取るべき。必要以上に高揚させられて影響を受けてはいけないと思います。

…あらら。正直に言うと、僕は「プレゼン下手だと(記事にしてもらえないので)損」というエピソードを聞き出して「プレゼン自主トレに参加しよう!」という話に繋げるつもりでした。でも、プレゼンの巧拙に影響されてはいけないという意見はその通りですし、僕はそんな湯川さんの書く記事が好きでもあります。うーん、どうしよ。

エラそうに話すのはサービス

そこで質問をちょっと変えて、プレゼンを「みる側」ではなく「する側」としての湯川さんについて訊いてみました。

湯川:日本で始めて講演会をやったのは時事通信社時代の2000年。桐生市でやった12人くらいの小さな講演会で、帰りの電車の中で胃がキリキリ痛かったのを覚えている。それだけ緊張していたんだよね。

ただ講演も回数を重ねると、どうということはなくなった。今は初めてのネタで公演するときも緊張しない。生き恥を晒しているから。ハハハ。場数を踏むのが大事だね

プレゼンは、2日連続するときは、2回目のほうがうまく出来よな。あ、これは練習したほうがヨイということか。ハハハ。やればやるほど上手になるんだな。

「場数を踏むのが大事」。そうです、その場を作るためにプレゼン合同自主トレをやっているので、湯川さんからこのセリフが出て安心しました。ほっ。

ただ場数を踏みさえすれば自動的にプレゼンが上手くなるわけでもないようです。湯川さんにプレゼンの際に気をつけていることを訊きました。

湯川 僕は意識して「偉そうに」話そうとしていますね。どちらかと言うと自分に自信のある方ではないのだけど。ダメで自信のない自分が、お金を頂戴して公演しているのはまずいだろ、と。やっぱり、自信たっぷりに何かを言ってもらいたい、お客さんはそういうのを聞きに来ているのだろうと思うから、わりと横柄な態度で自信たっぷりに話すようにしています。それがサービスだと思う。やりすぎると反感を買うけれどね。

「情報」はプレゼンが下手でも伝わるのですけど、「感動」とか「インパクト」はプレゼンの上手い下手で全然違いますよね。情報はウェブでも取れるので、人がリアルなイベントに行くのは情報以上のものを取ろうとしているのだと思う。何らかの感動を与えるプレゼンをしたいですね。

「自信たっぷりに言う」のは僕も見習いたい点です。自信を持って話すためにはきちんと準備をしなくてはいけないし、それが説得力を生むはずですから。

自信がないなら出て来ないで

さて、湯川さん自身はプレゼンの巧拙に影響されないと言いますが、それでもやはり、プレゼンターに期待することはあるようです。最後にプレゼンをする際のアドバイスをもらいました。

湯川:「只今ご紹介にあずかりました…」というような型にはまった言葉ではじめてほしくないな。もっとカジュアルに「こんにちは」で始めて欲しい。もっとフランクには話そうぜ!と思う。

あと、やっぱり堂々とコミュニケーションをしてほしい。演題に立ちっぱなしではなく、舞台を歩くとかして。僕も心がけているけど堂々と話して欲しい。そんな自信無さげに話すのではなく。皆のアテンションを30分から1時間奪うのだからそれなりのものをもってこいと。自信がないなら出て来ないでくれと思う。みんなの時間を30分取るというのはどれだけの価値があるかということを意識して欲しいな。

2 shotプレゼン自主トレはプレゼンを「する側」のスキルを伸ばすことを目的にしているので、湯川さんがプレゼンを「見る側」の責任に言及したのが印象に残ったインタビューでした。

「見る側」はメッセージを汲み取るように努力し、「する側」は自信満々でメッセージを発する。皆がこういう風になったらよいのは確か。

ただ現実世界では、「見る側」が湯川さんのように受け取ってくれるとは限らないので、「する側」が伝えるために工夫や努力をするべきなんだと思います。

世の中のプレゼン(講演会やセミナー)の時間と参加人数を積算するとものすごい量になるハズです。「聴衆の時間の価値と、それを奪うことの責任」を改めてに肝に銘じました。

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