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インタビュー

こんにちは、プレゼン合同自主トレ主宰者の宮崎洋史です。このコーナーでは、プレゼンテーションをテーマに、僕が気になる方々にインタビューをしていきます。

第一回目は、一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎(よねくら せいいちろう)先生です。

通常のインタビュー記事なら「先生」ではなく「氏」とか「さん」と書くべきなのでしょう。けれども、僕は米倉先生が指揮を執る米倉塾の一期生であり、これまでずっと「先生」と呼んできたのでこのインタビューでも米倉先生でいきます。

さて、塾で聞いた話の中に強く記憶に残っているものがあります。それは、米倉先生が留学していたハーバード大学では「教える練習」をしているということです。大学の授業も、人前で話し、情報を伝えるという意味でプレゼン。つまり、プレゼン合同自主トレはハーバードから学ぶことがありそうです。
というわけで、米倉先生に、ハーバード大学の経験や、先生自身のプレゼン観を訊いてみました。

プレゼンは習得可能なスキル

米倉先生のハーバード体験は、実は、アメリカに行く前に始まっています。ハーバード大で教鞭をとっていた竹内弘高氏が、米倉先生の勤務する一橋大学にやってきて半年間ほど一緒に仕事をしていたからです。それまで米倉先生には「大学の授業はつまらないものだ」という固定観念があったそうですが、竹内さんの授業を見てはじめて「面白い授業もあるんだ」ということに気づいたといいます。

米倉:実際にハーバード大に行って分かったことは、教えるのは「スキル」だということでした。

yonekura_photoハーバード大のビジネス・スクールは、ビジネスの現場で起こった実例を徹底的に叩きこむ「ケース・メソッド」という手法で生徒を鍛え上げるわけだが、ハーバード大では、素晴らしい論文を書いた研究者をまずアシスタント・プロフェッサーとして雇い、彼らにケースを教えさせる。

そして、その際、何回も先輩教官の前で模擬授業をやらせて「それでは通じない。板書はそこに書いてはいけない」とか、黒板のどこに板書をすべきかまで細かい指示を出して、先輩教官がフィードバックを与える仕組みになっている。コミュニケーションスキルとかティーチングスキルは天性のものではなく、習得しなければいけないものだと認識されているからだ。ハーバード大でプレゼンは一種のスキルだと学びました。

日本だと、素晴らしい論文を書けばコミュニケーション能力が低くても「あいつは研究者なんだからしょうがない」と見てもらえる。日本の大学・大学院教育では「中身や知識」がすごく重視されて、それを伝える訓練はほとんどされてこなかった。

米倉先生はハーバード大のビジネス・スクールのやりかたに驚き、「面白く伝えなくてはいけない」と思うようになったと言います。喋り方にメリハリをつけ、身振り手振りを交え、見る人を飽きさせない米倉先生のプレゼン力はハーバード大での経験に負うところが大きいのだと思いました。

コンテクストを共有しない社会へ

さて、大学など各所でプレゼンを見る機会の多い米倉先生は日本社会とプレゼンについてどう思っているのでしょうか?

米倉:今後、日本人もコンテクストを同じにしない人達と話す機会が増えてくると考えます。

コンテクストを共有しているとは、同じ業界や会社など、暗黙知を共有しているということで、そういう場合は伝え方が下手でも「お前の言いたいことはこうだよね」とわかってもらえたし、またそれを前提に話すことができた。日本はひとつの会社に終身雇用で勤め上げ、職場教育はOJTという社会を形成してきた。

これからはそういう状況が崩れて、異なる業界や会社にいかざるをえなくなるかもしれない。単線的なキャリアではなく、例えば、昼は会社の仕事、夜はプロボノ、週末はボランティアなど複線的なキャリアを歩む人も増えるだろう。そうなったとき異なるコンテクストでも自分の思っていることを短時間で伝えるのがすごく大事になるな。

コンテクスト云々というと難しく聞こえますが、簡単に言うと「アウェー」で通じる力をつけなくてはいけない、ということなんだと思います。

制限時間内で厚みを生むために

また米倉先生はプレゼンにおいては「時間を意識すること」が重要だといいます。

米倉:よくあるダメなプレゼンは、制限時間が20分なのに40分しゃべる人。

例えばNPOの人が資金調達のために企業の事業部長に会いに行くとする。もらった時間は30分。さあ、どうする。

こういう時間の限られた状況でダラダラ話すと「いよいよこれから…」というところで「時間になったので」と事業部長は帰ってしまう。これではプレゼンの意味がなくなってしまう。だからプレゼンは限られた時間の中でやらなくてはいけない。これも訓練。

プレゼンの後半にハイライトを持っていくのはリスクが高い。戦略な考え方とプレゼンスキルはリンクしていると思う。

制限時間を意識して要点を伝えることは僕も重要だと思います。自主トレでは制限時間を3分とし、きちんとタイムキープをしているのはそのためです。
ただし、プレゼンは制限時間に収めさえすればよいかというと、それも違います。米倉先生は、論文執筆を例にプレゼン論を展開してくれました。

米倉:論文を書く際に重要なのは、調べたことを全部書くわけではないということ。論文を書く際に最も勇気がいるのは「調べたことを捨てる」ことなんだ。
ただし15ページの論文を書くために200枚捨てた人と、20枚捨てた人の差は出る。

プレゼンでも全部言いたいという気持ちはわかるが、絞り込みそぎ落としていくと良いプレゼンになる。はじめ詰め込んでそれを削る。その作業が論述やプレゼンの「厚み」を生むんだ。

米倉先生はこのインタビューに答えるときも、メリハリをつけて話をしてくれました。プレゼンスキルは一度身につけると、どんな表現場面でも、自然に発動されてしまうものなのでしょう。

photo with yonekura・プレゼンは習得可能なスキル
・これからの世の中、プレゼンスキルの重要性が増す
・制限時間を意識する
・十分にしらべて、エッセンスをプレゼンする

僕の思いを代弁してくれたかのような米倉先生。出張直前の忙しい中、わざわざ時間を割いてインタビューに協力してくれたその期待を裏切らないように、プレゼン合同自主トレ活動を進めていきたいと思いました。

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