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インタビュー

今回はCSS Nite 2012ベストスピーカーに選出された原一浩さんにお話を伺いました。CSS Niteとは、ウェブ制作者のための勉強会で、2005年から現在まで継続している人気シリーズです。登壇者はウェブ制作業界で活躍している方々。2012年には65回のイベントで227回のセッションが開催され、二人のベストスピーカーが選出されました。

多くのウェブ制作者が一度は登壇することを目指すCSS Niteでベストスピーカーに選ばれるのは簡単なことではないはず。そこでまず、原さんにプレゼンの準備をどのように進めているのか訊いてみたところ、意外な答えが返ってきました…。

武者修行してます

hara原:多くの聴衆を集めて行うプレゼンは、実は、登壇を依頼される前に勝敗が決しているんです。依頼者は、僕と直接の面識がない場合が多く、過去に当該分野でどれだけ僕がプレゼンをしているかを調べて依頼してくるわけです。なので、僕はなにかイベントがあったら、LT(※1)でもなんでもヨイので「やります!」って直ぐに手を挙げちゃいます。要するに日頃からプレゼンをしているのがすごく大事なんです。2ヶ月もブランクを空けてから講演すると、慣れていたはずのネタでも緊張するものです。一ヶ月に一回はどこかでしゃべる気概でいないとダメですね。だからCSS Nite以外の、例えば、開発系のイベントでもちょくちょく喋ってますよ。日頃からチャンスがあったらしゃべってます。

具体的には、アテンド(※2)で「話す人募集」というのを見つけたら「ハイ、話します」って書き込んでしまうんです。まったくのアウェイ、誰も知り合いがいない場所でもそう書き込んでしまう。特に、自分の所属しているコミュニティでないほうがヨイですね。僕が開発系のイベントで最初に喋った時、そこに知り合いはゼロでした。「僕はデザイナーです」と表明しているので、「こいつプログラミングできるのかよ?」という風に視線は冷たかったのですね。それが武者修行になりました。

  1. LT (エルティー):5分ほどの短い時間で行うプレゼン。Lightning Talkの略
  2. アテンド:イベント運営者が集客のために使うウェブサービス。ATNDと綴る。

アテンドでイベントをみつけて「しゃべります」と手を挙げるって、スゴくないですか?「習うより慣れる」ためにプレゼン合同自主トレをやっているのですけど、慣れる方法としてこんな手段もあったのかとかなり驚きました。スゴっ。

スライドを作る前にストーリーを完成させています

さて、では、イベントへの登壇が決まったら、原さんはどんなふうに準備を進めていくのでしょうか?

原:プレゼンの作り方は僕の中では決まっています。僕はまず、マインドマップ系のツールを使って4つくらいの大見出しを作ります。そしてそれを細分化していくんです。細分化を3回くらい繰り返すと、全スライドのタイトルが出来上がるんですね。 アウトラインの作成って、ツールを使わなくてもどこでも出来るのが利点です。メモさえあればちょっと書いてみてシミュレーションする。こうやって練り上げていきます。

スライドを作るのはホントに最後の段階です。スライドを作る前にストーリーを完成させています。だからストーリーが出来上がるまでパワーポイントや、キーノートは開きもしません。確かにスライドを作りながらストーリーを考える人もいます。それで出来る人はそのやり方でよいのですけど、僕はそうは出来ないので…

パワーポイントに入っているテンプレートは使いませんね。丸、四角、三角、矢印くらいでことが足りるし。出来ないことはやらない。どうしても複雑な図形が必要な時はイラストレーターで描いてスライドに張りつけます。

あと、しゃべる練習は事前にはしません。脳内リハーサルはしますけど。

まずストーリーを作ってからスライドを作るというのは、僕も推奨している手法なので納得。やっぱり出来る人はそうしているんだな、と。 ただ、しゃべる練習をしない点には少々疑問を感じました。ちゃんと準備せずに本番に臨んでうまくいくものなのでしょうか?

hara原:僕は進行台本を作ります。A4の紙1枚または2枚にプレゼンのサマリーを書くんです。そして、30分経過時にプレゼンがここまで進まなかったら「巻いて」スピードを上げるとか決めておくんです。ネタ台本ではなく進行台本。これは絶対に作ります。

ただ僕も、プレゼン中に言うべきことを忘れてしまうかもしれない、と不安にはなります。僕の場合「スライド上には要点が一言」というケースも多いですし…。だから僕は進行台本を作った後にカンペを作るんです。しかも鉛筆で書く。そうすると、どこで何をしゃべるか忘れません。これは結構重要なポイントかもしれないですね。カンペは、読むためにではなく「お守り」として紙に書き、演台へ持っていきます。これで安心するんです。

そしてプレゼン中は時間を気にしていますね。すごく気にしている。で、時間管理には必ずアナログ時計を使うんです。パッと見てパッと分かるようにアナログ時計。銀座アップルシアターの演台には時計があるのですけど、あれは僕の時計。以前僕が忘れたものがそのまま使われているんです。

僕はパワーポイントやキーノートでプレゼンをする際「デュアルスクリーン」にして、自分の画面に時計や次のスライドを表示させたりします。原さんは、この手法はとらないと言います。それはなぜなのでしょう?

しゃべる人が前を見るようにしないとプレゼンとしてはダメ

原:パワーポイントでプレゼンする時は、デュアルスクリーンにして自分の画面に時計を表示させたりはせず、ミラーリングにします。デュアルスクリーンにすると喋る人が画面を見てしまいますからね。喋る人が前を見るようにしないとプレゼンとしてはダメだと思います。

実は、CSS Nite登壇者の間ではミラーリングが常識なんです。ミラーリング以外でプレゼンしようとすると主宰者に怒られるし(笑)。

プレゼン開始後、10分も経つと余裕がでてきて、つまらなそうに聞いている人が目に入るようになります。僕は、そういう人は意図的に見ないようにしています。つまらなそうな人に何か言っても反応がないので、投げたエネルギーがスルーしてしまうんです。でも、面白そうに聞いてくれる人へ投げると、ウンウン頷いてくれて、それが周りに伝播します。人は周囲に釣られてリアクションするんです。

ウンウン頷いてくれる人を見つけその人に話しかける。これ基本ですね。ハイ。

大体の人はユニークで面白い、それが出れば勝ちなんです

最後に原さんから、皆さんへメッセージをもらいました。

原: 結局は経験だと思う。ホントに「習うより慣れろ」です。
慣れないと本来の自分さえ出せません。慣れると、自分以上の力は出ないのだけど、普段の自分は出せます。ということは、自分が面白いことを知っていたら、一応、プレゼンが成り立つわけです。慣れればその人次第。慣れていないとその人次第にもならない。

個人的に面識のある人のプレゼンが「その人っぽくない」場合は「いつもの感じでいいのに〜」と残念に思います。普段は「〜だよね」と言っている人が、プレゼンになると「〜となります」と言ったりしますけど、そういうのは聞く人にとってはいらないですよね。

大体の人はユニークで面白い。それが出れば勝ちなんです。

2 shotインタビューで強く印象に残ったのは二点。
1)アウェーの場で武者修行をしているという話
2)「大体の人はユニークで面白い。それが出れば勝ちなんです」というセリフ
前者からは強さを、後者からは優しさが伝わって来ました。プレゼンは才能に恵まれた人だけでなく、多くの人に開かれたコミュニケーション方法なんですよね。

プレゼン合同自主トレは、面識のない人が7人集まるので、参加者にとってアウェーの場となります。ですので参加には「ある程度の強さ」は確かに必要なのですが、僕は参加者のよさが出るようにファシリテーションしている(つもりな)ので、皆さん、気後れせず是非参加してください。

お待ちしています!

プレゼン合同自主トレ第三期 参加申込み受付中

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